あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
新しい年を迎えましたが、日本各地では引き続き自然災害が相次いでいます。昨日も島根県および鳥取県で震度5強を記録する地震が発生し、昨年末には東北地方でも地震がありました。加えて、毎年のように台風や豪雨による水害も発生しており、「災害は特別な出来事ではなく、誰にでも起こり得るもの」になりつつあります。
また、間もなく令和7年分の確定申告期を迎えることから、本年最初の投稿では、災害等により損害を受けた場合の税制上の救済措置である「雑損控除」について、制度の概要や実務上の注意点などを整理してみたいと思います。
1.雑損控除の法的根拠
雑損控除は、所得税法第72条及び同施行令において、概要次のように規定されています。
(雑損控除)
居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族(その年分の総所得金額等が58万円以下であるものに限る。)が有する資産(生活に通常必要でない資産を除く。)について、災害又は盗難若しくは横領による損害が生じた場合において、その年の損失の金額の合計額が一定の金額を超えるときは、その超える金額を、その年分の総所得金額等から控除する。
さらに、控除額の計算方法、対象資産の範囲、除外される損失等については、法令及び所得税基本通達により詳細が定められています。
2.雑損控除の対象となる資産の範囲
(1)対象となる資産の基本要件
雑損控除の対象となるのは、次のいずれかが所有する、生活に通常必要な資産に限られます。
- 納税者本人
- 納税者と生計を一にする配偶者その他の親族(その年分の総所得金額等が58万円以下である者)
したがって、次の2つの要件を同時に満たす必要があります。
① 所有者が「本人又は生計一親族」であること
② 資産が「生活に通常必要な資産」であること
(2)「生計を一にする配偶者その他の親族」とは
「生計を一にする」とは、日常の生活費の全部又は一部を共通にしている状態をいいます。同居しているか否かは必ずしも問いません。
例えば、次のような場合が該当します。
- 同居して生活費を共有している配偶者や子
- 別居していても、仕送り等により生活を支えている親や子
単に親族であるだけでは足りず、経済的に生活を一体としている関係であることが必要です。
(3)「生活に通常必要な資産」の範囲
【対象となる主な例】
- 自宅建物
- 家具、家電、衣類、寝具、日用品
- 通勤・買物等のための自家用車、自転車
- 私用のパソコン、スマートフォン
【原則として対象外となるもの】
- 棚卸資産、事業用資産、山林
- 競走馬その他射こう的行為の手段となる動産
- 趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産(別荘など)
- 趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)
- 1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とうなど
使用実態により判断される点に注意が必要です。
3.控除額の計算方法(概要)
控除額は、次のいずれか多い方です。
①(損害金額 − 保険金等による補填額)− 総所得金額等の10%
② 災害関連支出の金額 − 5万円
※「災害関連支出」とは、災害等に関連して住宅家財等の取壊し又は除去のためにした支出などをいいます。
4.誤りの多い事例
実務上、次のような誤解や誤りが少なくありません。
(1)詐欺や脅迫による金銭被害
いわゆる「オレオレ詐欺」などによる被害は、原則として雑損控除の対象になりません。これは「盗難」には該当せず、財産の移転が被害者の意思に基づくものと整理されるためです。
(2)恐喝・脅迫により支払った金銭
脅迫されて金銭を支払った場合であっても、原則として雑損控除の対象にはなりません。
(3)保証債務の履行による損失
第三者の借金を保証しており、その返済を肩代わりした場合の損失も、原則として雑損控除の対象外です。
「気の毒だから控除できそうだ」という感覚と、税法上の取扱いは必ずしも一致しない点に注意が必要です。
5.繰越し控除
雑損控除の金額をその年の所得金額から引き切れない場合には、その引き切れない金額を翌年以後3年間に繰り越し、翌年以降の所得金額から控除することが認められています。
また、その損失の原因となった災害が「特定非常災害」に指定された場合には、5年間の繰越し控除が認められます。
6.確定申告について
雑損控除を適用するには、確定申告書第一表の「㉗雑損控除」及び第二表の「雑損控除に関する事項(㉗)」を記載した確定申告書を提出する必要があります。
なお、「災害関連支出の領収書」を添付又は提示する必要がありますが、e-Taxを利用して確定申告書を提出する場合には、その提出又は提示を省略することができます。
7.災害減免法による税金の免除・軽減制度の概要
大規模な災害により、住宅や家財に重大な損害を受けた場合には、雑損控除とは別に、「災害減免法」(災害により被害を受けた場合の租税の減免等に関する法律)に基づき、所得税の全部又は一部が免除・軽減される制度があります。
これは、災害により著しく担税力を失った納税者の生活再建を支援するため、税額そのものを直接軽減する制度であり、所得から差し引く雑損控除とは性質が異なります。
1.適用の基本要件
災害減免法の適用を受けるためには、原則として次の要件を満たす必要があります。
(1)所得金額要件
その年分の合計所得金額が1,000万円以下であることが要件とされています。
(2)損害金額要件
災害により受けた住宅又は家財の損害金額が、それらの価額の2分の1以上であることが必要です。
※「価額」は原則として災害直前の時価で判定されます。
2.所得金額階級別の軽減税額
上記要件を満たす場合、所得金額の階級に応じて、次のように所得税額が軽減されます。
| 合計所得金額 | 軽減される税額 |
|---|---|
| 500万円以下 | 所得税の全額免除 |
| 500万円超〜750万円以下 | 所得税額の2分の1免除 |
| 750万円超〜1,000万円以下 | 所得税額の4分の1免除 |
3.雑損控除との関係(選択適用)
災害減免法による税額免除と、雑損控除は併用できず、原則としていずれか有利な方を選択して適用する制度です。
- 所得が低く、税額自体が小さい場合 → 災害減免法が有利なケース
- 所得が高く、損害額が大きい場合 → 雑損控除が有利なケース
という傾向があります。
8.まとめ
雑損控除は、予期せぬ災害等による経済的打撃を緩和する重要な制度です。一方で、すべての「損失」が対象になるわけではなく、法的な要件を正しく理解することが重要です。
本年が、こうした制度のお世話にならずに済む穏やかな一年となることを心より願っております。
万一被害に遭われた場合には、早めに専門家にご相談ください。

